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憲法のふるさと

最近の発言から (7)

イロコイ
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日本の憲法、そして世界中の憲法や民主主義そのもののが、実はアメリカ先住民のイロコイ連邦にルーツを持つと言うことはほとんど知られていない。それはいわば歴史の大きなタブーとしてひた隠しにされてきたからだ。
1998年、私は「白船」計画を行いイロコイ連邦を訪れた。
ペリーによる黒船は日本に文明開化をもたらしたが、それは同時に大砲の脅しに屈して開国したという深いトラウマを日本に残した。白船計画は、文明開化のお返しに大砲ではなく歌と踊りと祭りによってアメリカ合衆国に平和開花をせまろうといういわば歴史のパロディーであり、日本精神に深く刻まれた砲艦外交のトラウマを癒すヒーリングの試みでもあった。
サンフランシスコを起点にインデアンの居留地を紡いで北米大陸を3週間かけてバスで横断する白船計画は、先住民の魂を訪ねる旅となった。沖縄からそして日本から、またアメリカからも目覚めた黒人や白人が参加して総勢は160名に達した。ニューヨークで国連のアナン事務総長に平和のメッセージを届けた後、「すべての武器を楽器に」をテーマに掲げる白船計画が最終目的地をイロコイ連邦に定めたのは、その国が1000年も昔にすべての武器を放棄した歴史を持っているからだ。
イロコイ連邦はカナダに接するニューヨーク州の北部、オンタリオ湖南岸に存在する。現在はモホーク、オナイダ、オノンダーガ、カユーガ、セネカ、タスカローラの6部族連合体である彼らは、ニューヨーク州内に独自の領土を持ち、その領域には米国の警察権も及ばない。彼ら自身のパスポートも発行している独立国だ。
かつて北米大陸最大の勢力を誇っていた彼らは、15世紀末のコロンブスの「発見」以来ヨーロッパ諸国の北米進出に際し矢面にたって交渉に臨み、米国とは相互不可侵、平和共存の条約を結んでおり、合衆国内での治外法権を認められている。
このインデアンの独立国であるイロコイ連邦に、私たち白船の一行は一国の使節団を迎え入れる伝統的な公式外交儀礼を持って迎えられた。インデアンの言葉で行われたその格調高いセレモニーは、地球の裏側からやってきた白船一行をイロコイの国をあげて歓迎するという表明と、彼らが「沖縄」を一独立国家と認定した上で、先住民の独立国どうしである沖縄とイロコイとの交流を祝福し、共に世界の平和のために努力することを誓い合うというものだった。
高貴なる野蛮人と呼ばれ、マルクスも大きな影響を受けたというイロコイ連邦、そこは民主主義や憲法だけでなく、婦人の権利回復運動、連邦制度などの発祥の地でもあり、18世紀のアメリカ合衆国建国をきっかけとして全世界に広がった民主化のふるさとである。
かつてイロコイ連邦の5部族(現在は6部族)はお互いにいがみ合い、長い間争いの歴史を繰り返していた。そこに今から1000年前、ピースメーカーと呼ばれる男が現れる。彼は争いに明け暮れる5部族に対して、これからは戦いではなく理性と話し合いによって問題を解決してゆこうと説得してまわった。100年かかったピースメーカーのねばり強い説得の末、5つの部族はこれを受け入れることにした。ピースメーカーは5部族の全員を一本の大きなホワイトパインの木のまわりに集めこれを掘り起こすと、全部族のすべての武器をその穴のなかに捨てて、再びその上にホワイトパインの大木を埋め戻した。そしてこの大きな木の下を流れる地下水が今までに流された血と涙をすべて洗い流すだろうと唱え、争いの歴史に終止符を打ち、新しい5部族連邦の建国の誓いをとした。以来この「大いなる平和の木」が連邦のシンボルとなる。
ピースメーカーが創始したイロコイ民主制は氏族(クラン)ごとに全女性の合意で選出されるクランマザー(族母)と族母の任命によるチーフ(族長)を柱とする。基本的には女性が子供と財産を継承する母系制である。49人の族母とチーフ達に加えて、米合衆国大統領の原型ともなった名誉職の大族長が1人選ばれる。
最終的な物事の決定は会議で行う。言葉を話せる者は子供から年寄りまで皆等しい発言権を持ち、ロングハウスと呼ばれる議事堂に集まって連邦の課題について議論する。そして多数決ではなく全員が一致するまで徹底した話し合いを行って物事を決めてゆく。決定にあたっては7世代先の子孫達のために何がよいかを考慮して行うという。
このようにイロコイ民主制は女性と子供の権利を完全に保障した上で代議制と直接民主主義とがうまく融合した形になっている。
北米に500あまり存在した先住民の国々を代表する政体であったイロコイは、母国の圧政に耐えかねた13のイギリス植民地が独立を目指したときに大きなインスピレーションとモデルを提供した。13の植民地に連合を勧め、アメリカ合衆国の誕生に様々な影響を与えた。13の矢(イロコイでは5本)をつかんだハクトウワシの国章、言論・信教の自由、文武分離、三権独立、独立性の高い州からなる連邦制、女性を含む普通選挙、公職者に対する弾劾権など米国がイロコイに学び取り入れたものは多岐に渡る。とりわけ憲法の制定に対しては1780年代に継続して開かれた制定会議に常にイロコイをはじめとするインディアン諸国の代表が参加して有形無形の入れ知恵をした。なかでも子供の頃からイロコイ文化の薫陶を受けて育ったフランクリンとジェファーソンは建国の立て役者として重要な役割を果たしている。
アメリカの独立と合衆国憲法制定はヨーロッパに伝わり、自由と平等を謳った米独立宣言は大きな影響を与え、自由・平等・友愛を合い言葉とするフランス革命へとつながる。こうしてその後の世界の民主化の流れに決定的な方向付けがなされた。
憲法と民主主義の成立の歴史を見てくると、当然日本の憲法もイロコイから始まるその大きな流れの中に位置していることに気が付く。
日本の憲法はアメリカ先住民からの大いなるプレゼントである事が見えてくる。
改憲や解釈改憲の問題を私はこの地点から考えている。
憲法を改正し自主的な憲法を持つべきと言う考えも、護憲という考えもその根底にはともにトラウマが潜んでいる。
改憲を唱える人たちは憲法を押しつけられたものであると考えており、敗戦によって痛めつけられたというトラウマから発想している。これが現在の解釈改憲という暴走へとつながってゆく。一方の護憲を唱える人たちは、改憲されれば9条を守れないという思いがトラウマとなっており、一切の改憲を受け付けない。
憲法が国の最高法規であると規定する98条には、その同じ条項の中に外国との条約の遵守が並び埋め込まれている。これにより、憲法と条約は一体どちらが上なのかという混乱と論議を呼んできた。議論上は憲法優位が主流となっているが、実際には日米安保条約や地位協定など条約優位に運用されつづけている。
このような条項は憲法に突き刺さったトゲであり抜かなければならない。
憲法の改憲は9条や前文などの平和のエッセンスを失うようなものではなく、もっとその源流へとさかのぼり地球への案内人である先住民の知恵に学んで、より平和の方向へと進化させるようなものでなければならないだろう。
地球を裏切らなかった人々である先住民は大地であり、覚醒したスピリットは天だ。天と地が交わるところ、それは祭りである。天と地が開くのが今回の祭りであろう。

喜納昌吉
(済州島で10月に行われる「JEJU平和祭~クニヲコエテ~2014」に寄せて・文中イロコイ連邦についての記述は白船計画公式パンフレット掲載の星川淳「民主主義のふるさと イロコイ連邦」より引用)

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